2020年1月29日

N95マスクなら新型コロナウィルスを防げるか

SARS 流行の時に購入した 3M 8210 N95 防塵マスク

写真は物置から出てきたマスクで、SARS(重症急性呼吸器症候群)流行の時に購入したものだ。住友スリーエムの製品で、粒子捕集効率が95%以上なので N95 マスクと呼ばれているそうである。昨28日の朝日新聞デジタル版の記事「新型肺炎、コンビニのマスクで防げる? 専門家に聞いた」が目に止まった。中国のソーシャルメディア上では「N95マスクでなければ意味がない」といった書き込みが連日流れ、ネット通販サイト「タオバオ」では偽の高性能マスクが出回り消費者の混乱を招いているという。それではコンビニで売っている普通のサージカルマスクではだめなのだろうか。海外で働く人に医療とセキュリティーのアシスタンスサービスを提供する「インターナショナルSOS」の葵佳宏医師によると
N95は0.3マイクロメートルの粒子を除去できるフィルターがありますが、新型コロナウイルスは0.1マイクロメートルです。フィルターの穴を通過してしまい、吸引を防ぐことはできません。
という。「感染症を扱う頻度が高い医療従事者を対象に、N95とサージカルマスクを使って急性呼吸器感染症への罹患率を比較したデータがあります。両者に差はありませんでした。別の臨床試験でも、インフルエンザを含む罹患率の比較を行っていますが、N95が優位であったという結果はありませんでした。つまり、サージカルマスクをつけていてもN95をつけていても変わらないのです」という。結論から言えば、テレビなどでも報じられてるように、マスクに予防効果はない。くしゃみやせきで唾液の飛沫を周囲にまき散らさないため、他人を感染させないために着けると考えるべきだという。やはり手洗いを怠らないことが肝要なようだ。

health 住友スリーエムジャパン:呼吸用保護具に関するソリューション(マスクの知識)

2020年1月28日

野暮ったい L.L.Bean がお気に入り

L.L.bean Boat and Tote Open-Top

洋の東西に関わらず、人々が荷を背にするようになった。およそアウトドアとは縁がなさそうな年配のご婦人が、Patagonia や JanSport などのタグがついたリュック、あるいはデイパックを背に担いでいるのを見ると微笑ましくなる。私自身はブランド名が気になるが、多くの人が拘っていないのではないかと想像している。強いて拘りを感ずるのは North Face のランドセルのようなリュック、そして Sierra Designs のポケットのファスナーが斜めについてデイパックくらいだろうか。

L.L.bean Gum Boots
リュック類に限らず、ジャケットなど、アウトドア用品はデザインが大同小異、見分けがつき難い。ところが見て一発で分かる製品がある。L.L.Bean のトートバッグとガムブーツである。トートバッグはキャンプなどで、水をそのまま入れて運ぶことのできるキャンバスなどで作られた、丈夫な布地で大きな角型の手提げ袋である。開口部にファスナー付きの布を被せた製品もあるが、これはやはり邪道だと思う。コットンキャンバス地の英国製釣り用バッグを愛用しているが、無論、ファスナーを使っていない。つまり壊れる部分がないのが、伝統的なアウトドア用品なのではないだろうか。その点、L.L.Bean のトートバッグは心強く、ガラス瓶に入った炭酸水などの買物に重宝している。ところでガムブーツというのは要するにゴム長のことなのだが、L.L.Bean の象徴的製品である。作業用のゴム長靴にレザー・トップを縫い付けた靴で、私も雨天用に一足購入した。狩猟用なので、沼地などで抜群の性能を発揮しそうだが、重く、しかも履き心地に優れているとは言い難い。あくまでアウトドア用で、眺めているだけで自然に誘ってくれる。どちらかといえばいずれも野暮ったい、ダサいデザインだが、そこが実に良いのである。

YouTube  米国メイン州の自社工場で製造される L.L.Bean ボート・アンド・トート・バッグ(日本語字幕)

2020年1月25日

馬やら人やらわからない

新馬鹿の唄(啞蟬坊・赤春詞・啞蟬坊附曲)

添田知道(1902-1980)著『演歌の明治大正史』(岩波新書)が2018年11月20日に復刻されたのを最近知った。これまで所持していたのは、1963年10月21日発行の初版で、150円と書いてある。1970年代初頭に入手したと記憶しているが、傷みが酷く、表紙が黄ばんでいる。添田啞蟬坊(1872-1944)の歌のヴァイオリン弾き語りを試みたことがあり、歌詞を書き写すため、繰り返しなんべんもページをめくったものである。上掲写真の「新馬鹿の唄」を抜き書きしてみよう。
添田啞蟬坊(1903年ごろ)
九段坂から見下ろせば 人が車を曳いてゐる
馬も車を曳いてゐる 馬やら人やらわからない

議員議会で欠伸する 軍人金持と握手する
インフルエンザはマスクする 臭いものには蓋をする

金の腕輪に夜会服 帝国ホテルの舞踏会
昨日三越今日歌舞伎 わたしゃ風船風まかせ

雨がふるふる日は暮れる 工場帰りの女工さん
泥にはまって困ってる 二階ぢゃ芸者が笑ってる

労働問題種にして 本屋学者は繁昌する
活字拾ひの職工は 青くなって痩せている

かせぐに追ひつく貧乏は ないと思へよ労働者
廻る機械にひけとるな おれはその間に一眠り

政治屋地主をかつぎあげ 地主議員をかつぎあげ
せがれ親父をかつぎあげ 小作貧乏で鍬かつぐ
演歌というと艶歌ないし歌謡曲を連想するが、本来は「演説の歌」という意味である。集会条例で街頭演説が禁止されても、歌なら構わないだろうという発想だった。これは讃美歌の旋律を借り、街頭で労働組合運動を展開、フォークソングの礎を築いたジョー・ヒル(1879–1915)と酷似している。演歌は民権運動の思想を普及する意図で現れたが、明治から大正にかけて活躍した演歌師としては、添田啞蟬坊が傑出している。1972年に東京に転居した。確かその年の暮れだったと思うが、浅草で「啞蟬坊生誕百年祭」があり、図々しくもヴァイオリンを手に押しかけ、遊郭の女性を描いた啞蟬坊の「思ひ草」を歌ったのである。会場は奇しくも東京浅草組合の花街の検番で、芸妓さんが「むらさき節」を歌ってくれた。ここで啞蟬坊の子息で『演歌の明治大正史』の著者、作家の添田知道さんと知り合った。吉原遊郭跡、台東区日本堤の蹴とばし屋「中江」(馬肉料理店)に連れていただいたのも懐かしく思い出される。余談ながら知道さんによると、啞蟬坊はヴァイオリンは上手だったけど、街頭その他では無伴奏で歌ったそうである。

2020年1月23日

ケン・バーンズが見落としたモンロー・ブラザース

永遠のモンロー・ブラザース(日本ビクターRA-5281)1963年

Country Music by Ken Burns(2019)
ソーシャルメディア Facebook で私が管理しているページ「アメリカンルーツ音楽」にモンロー・ブラザースの『聖者の行進』をポストしたところ、このグループをケン・バーンズが見落としているというコメントがあった。ケン・バーンズ(1953-)はドキュメンタリー映画作家で、昨年の秋、米国の公共放送でオンエアされた "Country Music: A Film by Ken Burns" が話題になった。DVD もリリースされたのだが、5枚組 CD ボックスセットを購入した。米国フォーク音楽のコンピレーション "Anthology of American Folk Music" を編纂したハリー・スミス(1923–1991)に匹敵する選択作業と言えるかもしれない。合わせて108曲が収録されている。商業レコードが誕生して約100年、そこから約100曲余りを簡抜するのは、確かに至難の業だと思う。ビル・モンロー&ブルーグラスボーイズを取り上げているが、モンロー・ブラザースは抜け落ちているのはやはり気になる。1930年代に活躍、ブルーグラス音楽の土台を築いた兄弟デュオだ。南部アパラチア山系の伝承音楽にギターを取り入れたのはメイベル・カーターだったが、兄のチャーリーはブルーグラス音楽のギター奏法の基礎を作ったと言えそうだ。さらにマンドリンを導入した弟ビルの功績も大きい。というわけでケン・バーンズが見落としたという指摘に大いに納得した次第だ。下記リンク先の音楽ファイル共有サービス「サウンドクラウド」で彼らの『聖者の行進』を聴くことができる。

SoundCloud  モンロー・ブラザース『聖者の行進』1936年10月12日ノース・カロライナ州シャーロット