2024年3月8日

未だに途絶えていないモノクロ写真の制作

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ポケモンセンター(京都市下京区函谷鉾町)FUJIFILM X100F フィルムシュミレーション

デジタル写真が出現するずっと前、写真術がカラーから始まったとしたら、モノクロ写真は生まれただろうかと考えたことがある。絵画の世界の水墨画に相当する写真が誕生したかという点は興味深い。カラー写真術が生まれても、報道や広告写真などを除けば、芸術の世界ではモノクロ写真が主流だった。カラー写真が芸術として認められていなかった背景には、色の再現性や保存の問題といったその技術的な限界だけではなく、モノクロ写真が芸術的でカラー写真はそうではないという、根深い固定観念があったからかもしれない。ただしかし後述するように、フィルムからデジタルカメラに移行しても、モノクロ写真の制作が未だに途絶えていない。話は錯綜するが、1960年代後半から1970年代初めにかけて、アメリカの新しい世代の写真家たちが、カラー写真で作品を発表しはじめた。彼らの作品は「ニューカラー」と総称された。

ワウラ族
セバスチャン・サルガド「ピウラガ湖で漁をするワウラ族」(ブラジル)

デジタル革命により暗室は必要性を失い、明室でパソコンによる後処理をするようになった。プリントの作成はより速く、よりきれいになったが、常にカラー写真を扱うことを前提にしている傾向がある。しかしモノクロ写真に拘ってきた写真家は、デジタル時代になっても、モノクロ写真を制作し続けている。例えばブラジルのセバスチャン・サルガド(1944年生まれ)である。カナダのドキュメンタリー誌「Point of View Magazine」のインタビューに対し、2008年からデジタルカメラを使うようになったと答えている。2006年に発売された Leica M8 だと思われる。2001年のアメリカ同時多発テロ事件以降、空港のセキュリティが変わり始め、グアテマラで仕事をした後、空港のX線検査で52巻のフィルムを失ったことがそのきっかけだった。パソコンでの編集の仕方がわからないので、助手に4x5インチのデジタルネガを制作して貰いプリントしたという。

Leica M11 Monochrom
Leica M11 Monochrom

モノクロ専用機 Leica M Monochrom が発売されたのは2012年だった。RGBのカラーフィルターがない分だけ高画質だった。現行機種 Leica M11 Monochrom の発売は2022年だが、サルガドが現在どの機種を使っているか不明である。CMOSセンサー6,000万画素、ライカストアでの価格は1,496,000円(税込)レンズは例えばアポズミクロンM F2.0/50mm が1,298,000 (税込)だから、併せると何と1,298,000 円也、庶民には手が届かない値段である。それでもモノクロ写真に拘る写真家には必携の道具となっている。アメリカ人写真家ピーター・ターンリー(1955年生まれ)もそのひとりで、最近ではロシア軍の侵攻で隣国ポーランドにに逃れるウクライナ難民を、ライカのデジタルカメラで撮影している。森山大道(1938年生まれ)はモノクロの詳細設定が可能なリコーのデジタルカメラを使っている。撮影方法はフィルムとデジタルで変わっただろうか。

彩度をゼロ
カラー画像の彩度をゼロにしてモノクロ化
時代祭で巴御前に扮した芸妓里美(京都御所)

雑誌のインタビューで「撮り方は変わらない。ただフィルムのときは撮り終わったらダンボールに入れて、200本、300本たまったらまとめて現像したけれど、今は撮ったらその場で見るし、すぐ消すこともある。フィルムはあとで現像したときに、おっ、と思う面白さがあったけれど、今はそれはないね」と答えている。私が所有している富士フイルムの X100F も同じような機能があり、同社の黒白フィルム PROVIA などをシュミレーションした撮影ができる。ただ、いずれもカラー写真を撮れるカメラで、RGBのカラーフィルターがない Leica M11 Monochrom には太刀打ちできない。レタッチソフトでモノクロ化が広く使われていると思われる。例えばアドビ社の Photoshop ならカラー画像の彩度をゼロにすれば、モノクロ写真が至極簡単に出来上がる。下記リンク先は、デジタル時代のモノクロ写真の品質をいかに優れたものにするか、撮影からパソコンの画像処理まで、その達成方法のコツを解説した記事です。

camera  Kent DuFault |Taking a Black and White Photo in the Digital Age | ExposureGuide.com

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