2023年12月16日

冷戦時代を歌ったカントリー歌手たち

IMAR 117

ジャケットに放射能の警告を表すマークをあしらった、かなり珍しいカントリー音楽のレコードを見つけた。"Cold War Countdown: Country Music Goes To Cold War (1952-1972)" とタイトルされたビニール LP 盤で、2019年にリリースされた。朝鮮戦争からヴェトナム戦争、そして冷戦時代の不安要素を含んだ、オフビートなカントリーミュージックを集めている。トラックリストを見てみよう。

A1 God Please Protect America: Moore & Napier (2:34)
A2 I'm No Communist: Grandpa Jones (2:28)
A3 Ain't I Right: Johnny Freedom (3:14)
A4 Freedom Monkey: Doc Williams (2:40)
A5 The Bearded Bandit of Cuba: Art & Glenda Davis (2:10)
A6 The Bay of Pigs: Red River Dave (2:22)
A7 Ballad of Two Brothers: Autry Inman (3:30)
A8 Fall-Out: Red Castle (2:02)
B1 Little Boy Soldier: Wanda Jackson And The Party Timers (2:36)
B2 Crazy Viet Nam War: Stringbean and His 5 String Banjo (2:42)
B3 Ruby, Don't Take Your Love To Town: Mel Tillis (2:46)
B4 Congratulations (You Sure Made A Man Out of Him): Arlene Harden (4:00)
B5 One More Time, Billy Brown: The Shacklefords (4:02)
B6 The Patriot: Marie Roberson (2:14)
B7 The Craziest War of the Universe: Jefferson County Bluegrass Boys (2:34)
B8 The War Keeps Draggin' On: The Wilburn Brothers (2:54)

オープニングはムーアとネイピアの「神よアメリカをお守りください」で、これに続いてグランパ・ジョーンズが「私は共産主義者ではない」を演奏。さらに、アート&グレンダ・デイビスの反カストロソング「キューバのヒゲの盗賊」、そしてカントリー&ロカビリーミュージシャン、オートリー・インマンの「ふたりの兄弟のバラード」と続く。ワンダ・ジャクソンの「リトル・ボーイ・ソルジャー」がB面のオープニングを飾り、ストリングビーンの1966年のシングル「狂ったヴェトナム戦争」が続く。ヴェトナムで起こっていたことへの不信感や絶望感さえも溢れている。おなじみの曲では、メル・ティリスが歌う「ルビーよ息子を町に連れて行くな」である。マリー・ロバーソンの「パトリオット」はこのレコードが初出ではないだろうか。

Disk

ジェファーソン・カウンティ・ブルーグラス・ボーイズの「宇宙で最もクレイジーな戦争」やウィルバン・ブラザーズのアルバム・クロージング曲「戦争は続く」も同様に反戦歌である。このコンピレーションは「レコードストアデイ2019」のためにリリースされたもので、500枚の限定版となっている。ブラック・ビニールにプレスされたものが250枚、残りの250枚はイエロー・ビニールにプレスされたものだ。このレコードは、これまでのレコード発掘者やキューレーターが見過ごしてしまった隠れた逸品をより深く掘り下げている。そうは言っても、お馴染みの人たちの曲や、多くのカントリーミュージックファンが知っている曲もある。新しいもの、馴染みのあるもの、隠れた名曲が混在しており、国を二分したアメリカ史の重要な時期を記録しているため、カントリーミュージックのファン以外にもアピールできるコンピレーションとなっている。

University  Country Music Goes to War | The University Press of Kentucky | ISBN: 9780813192048

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