2023年9月3日

福島第一原子力発電所の廃炉を拒む深い闇

Storage tanks for treated water
福島第一原子力発電所敷地内に立ち並ぶ処理水保管タンク

東京電力は8月24日、福島第一原発にたまり続ける汚染水をALPS(多核種除去設備)で処理した廃水の海洋放出を始めた。風評被害を懸念する漁業関係者らが反対する中「政府が一定の理解を得られたと判断した」として放出に踏み切ったのである。2023年度には4回に分けて計3万1,200トンを放出する計画。一方で汚染水は毎日発生して処理水も増え続けるため、年度内に減らせる処理水の貯蔵量は約1万1,200トンと、総量の約0.8%にとどまる見通しという。野村哲郎農林水産大臣が8月31日、記者団に対し、福島第一原発にたまる廃水を汚染水と発言したが、その通りだし、慌てて撤回する必要はなかったと思う。東京電力および政府が主張する処理水とは、原子炉内の燃料デブリを冷却作業で発生する汚染水を ALPS で処理した廃液であるが、トリチウムが除去できずに残る。また汚染水は燃料デブリに接しているのでヨウ素129やセシウム135などが残存している。東電は海洋放出する場合、二次処理すると説明している。しかし二次処理後はどの程度の量になるのか。二次処理した上でその総量を示すべきだと思うのだが、それすら明言していないのである。IAEA(国際原子力機関)は人間や環境に与える影響は無視できる程度だとしている。日本が約74億5,000万円)以上を拠出している IAEA の中立性に疑問が残る。東電の隠避体質もさることながら、安全というその「お墨付き」は信用できない。

ALPS
汚染水発生のメカニズムと ALPS 処理汚染水

2011年の地震とそれによって起きた津波で、原発は破壊された。冷却システムが壊れ、炉心がオーバーヒートし、施設内の水は高濃度の放射性物質で汚染された。廃水の海洋放出に対し、国内外の批判を浴びているが、もし日本が廃水を海に流す前に放射性物質をすべて除去できていれば、これほど物議を醸すことはなかっただろう。放出作業は少なくとも30年かかるという。問題なのは、現在、わずか1gの燃料デブリも取り出せていないという現実である。東工大ゼロカーボンエネルギー研究所の澤田哲生博士によると「全量取り出しはほぼ不可能に近い」という。10年、20年で終わらないのはもう明らかだ。どれくらい時間がかかるのか、100年単位でかかるのではないかという見積もりも出ているという。処理水は安全だという主張は、そうあって欲しいという虚しい願望の裏返しである。下記リンク先は「福島第一原発の廃炉は海洋放棄よりもはるかに困難だ」と題したAP通信の記事である。蛇足ながら処理水ではなく "Radioactive wastewater"(放射性廃水)と呼んでいる。

Associated Press  Fukushima decommissioning the nuclear plant is far more challenging than water release

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