2023年8月9日

一番好きなブルーグラス音楽アルバム

Smithsonian Folkways Recordings - SFW 40238

ブルーグラス音楽を本格的に聴き始めたのは1960年代に遡るから、なんと半世紀以上もこの音楽に浸かってきたことになる。ふと思いついてグーグルの人工知能チャットボット Bard に最も好まれているアルバムは何かと英語で訊いてみた。すると以下のようなリストがジャケット写真付きで返ってきた。

  1. Will the Circle Be Unbroken by the Nitty Gritty Dirt Band (1972)
  2. Foggy Mountain Jamboree by Flatt & Scruggs (1961)
  3. Home by Billy Strings (2020)
  4. Ricky Skaggs & Tony Rice (1980)
  5. So Long So Wrong by Alison Krauss & Union Station (2000)

トップのニッティー・グリッティー・ダート・バンドの「永遠の絆」は、ドク・ワトソン、アール・スクラッグス、メイベル・カーター、アリソン・クラウスなど、ブルーグラス界の大物がゲスト参加した。批評的にも商業的にも成功し、グラミー賞5部門を受賞した作品である。2番目のアルバムにはブルーグラス・アルバムの決定版のひとつとされ "Foggy Mountain Breakdown " や "The Cuckoo Waltz "といったフラット&スクラッグスの代表曲が収録されている。番目のアルバムはビリー・ストリングスにとってブレイクのきっかけとなった作品で、彼の特徴である伝統的なブルーグラスとプログレッシブなブルーグラスのブレンドが特長だ。4番目のアルバムは史上最高のブルーグラス奏者コラボレーションであり、彼らの最も象徴的なデュエットが収録されている。5番目のアルバムはアルバム・オブ・ザ・イヤーを含むグラミー賞5部門を受賞した。クラウスの見事なヴォーカルとユニオン・ステーションのタイトな音楽性をフィーチャーし、美しく感動的なブルーグラス・ミュージックを創り出す彼らの能力を披露している。これを見てちょっと驚いてしまった。人工知能 Bard は、インターネットに蓄積されたビッグデータをを元にしたチャットボットだが、私が予想にかなり近いものだったからだ。

Liberty Records LLP-9027C
Liberty Records LLP-9027C

ところで標題の「一番好きなブルグラス音楽アルバム」だが、グーグルの人工知能チャットボット Bard が教えてくれたアルバムはいずれも好きである。やや地味ながらスミソニアン・フォークウェイズが2021年にリリースした CD アルバム "Industrial Strength Bluegrass: Southwestern Ohio's Musical Legacy" がベストチョイスである。地味と評したのは、シェラ・フルやヴィンス・ギルなどのテイクがありながら、そのスター性を制御している編纂に感じられるからだ。私はダン・ティミンスキーが歌う "20/20 Vision" が特にお気に入りで、何度聴いても飽きないのである。スミソニアン・フォークウェイズの解説を引用しよう。

20世紀中頃の数十年間、オハイオ州南西部の工場は、無数のミュージシャンを含む何十万人ものアパラチアからの移住者を引き寄せていた。"Industrial Strength Bluegrass"(工業的強度のブルーグラス)は、こうした移民たちが作り、愛した音楽を称え、ブルーグラスとカントリーミュージック全体の歴史における極めて重要な瞬間を探求している。最愛のパフォーマーでありラジオ・パーソナリティのジョー・マリンズがプロデュースしたこのコレクションには、ロンダ・ヴィンセント、ボビー・オズボーン、マリンズ自身など、ブルーグラスの重鎮たちが豪華な顔ぶれで、何十年もの間オハイオ中に響き渡ってきた曲に挑んでいる。今日のブルーグラス界の大物たちによるこのグループは、工場や倉庫に囲まれた生活の陽気な高揚と孤独な低落に敬意を表し、この地域の豊かな文化とたくましい人々を反映している。

ブルーグラス音楽は1940年代に米国のアパラチアで発展したルーツ音楽である。人々は工業地帯(ラストベルト)に移住してもこの音楽を手放すことができなかったのである。このアルバムの魅力はプロデューサーで最初の曲 "Readin', Rightin', Route 23" のヴォーカルとバンジョーを担当している、ジョー・マリンズの編集手腕に負うところが何と言っても大きい。オハイオ州南西部で生まれ育ったバンジョー・ピッカーだが、彼の父ポール・ムーン・マリンズは、クラシック・カントリー・ラジオのブルーグラス番組の放送者として40年以上に渡って活躍したフィドラーだった。まさにこのアルバムはそのレガシーである。なお全曲を下記リンク先のスミソニアン・フォークウェイズの YouTube チャンネルで視聴することができる。

Smithsonian Folkways Recording  Industrial Strength Bluegrass: Southwestern Ohio's Musical Legacy | Smithsonian FW

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