2023年3月4日

カウボーイハットの歴史と特徴

Cowboy Hats
Billy Strings at Ryman Auditorium, Nashville

先月26日、テネシー州ナッシュビルのライマン公会堂で開催されたブルーグラスの麒麟児ビリー・ストリングス(1992年生まれ)の神技ギターピッキングとボーカルのライブ動画を YouTube で楽しませてもらった。特筆すべきはビリーが白いカウボーイハットとスーツで登場したことである。バンドのメンバーもブルーのハットにスーツ姿だったが、ネクタイがリボンタイなのは、レシター・フラット&アール・スクラッグスのフォギー・マウンテン・ボーイスに倣ったのかもしれない。10代の時にはインディ・ロックバンドで演奏していたビリーだが、グランド・オール・オプリ会場として知られる、カントリー音楽の殿堂ゆえの舞台衣装だったのかもしれない。ブルーグラス音楽の始祖ビル・モンロー(1911–1996)は、兄チャーリーとのモンロー・ブラザースの時代からステットソンの帽子を愛用していた。オリジナルのブルーグラス・ボーイズが誕生したのは1939年だった。ビル・モンローの意図を推測するのは難しい。

Bill Monroe wore Stetson Cowboy Hat

ブルーグラス・ボーイズのドレスコードやステージでの見せ方については、テネシー州ナッシュビルのグランド・オール・オプリの興行主であるジョージ・D・ヘイ(1895–1968)の圧力に大きく影響されていたのではないかと考えられる。ヘイはステージショーのために、みんなに本物の「カントリー」を見せたかったのだろう。彼はミュージシャンのためにカントリー調のステージ上の人格を考案し、それに合わせて派手なモノマネをしたのである。モンローは、ヘイが好んでいた下品で搾取的で自虐的な田舎の風刺画から離れて、ケンタッキーの貴族と呼ばれるイメージに向かうことで、他のオプリの仲間たちとは一線を画そうとしたのだと考えられる。黎明期のカントリー音楽のミュージシャンたちは、ステットソンの帽子をカウボーイハットという認識を持っていなかった可能性がある。ステットソンのウエスタンハットがカウボーイハットとしてイメージが定着したのは、やはり西部劇の影響が大きいのではないだろうか。巨星ハンク・ウィリアムズ(1923–1953)もステットソンの帽子を着用していたが、バンド名のドリフティング・カウボーイズが象徴的だ。

Buffalo Bill's Wild West
Young cowboys from Buffalo Bill's Wild West, 1886, posing with their guns and chaps.

カウボーイハットとは、クラウン(帽子の山の部分)が大きく膨らんだオーバーフロー型のハットと定義されている。テンガロンハットと呼ばれることもある。突出したクラウンと広いツバを持ち、ファッションや天候の保護など、特定の条件に合わせて被る人が変更できるようにうまく設計されている。欧米では代表的な帽子で、メキシコ人がかぶっていることで有名である。アメリカ西部や南部の牧場で働く人々、メキシコのカントリーミュージック歌手やランチェロミュージシャン、北米のロデオサーキットで活躍する人々の間で、カウボーイハットは一般的なものとなっていた。カウボーイハットは西部劇で最もよく知られた服装だが、当初は現在のような丸くカーブしたブリム(つば)を持っていなかった。最初のカウボーイハットは、1865年、アメリカの南北戦争末期にジョン・B・ステットソン(1830–1906)によってデザインされた。ステットソンは有名な帽子メーカーで、フィラデルフィアにルーツを持つ。彼がデザインした最初のカウボーイハットは、当時「平原のボス」と呼ばれた。この帽子は、ビーバーやウサギなどの小動物の毛皮と細い毛を使って作られていた。

Resistol Hatco
Resistol Hatco, Garland, Texas

現在のカウボーハットを変えたのはメキシコ人である。デザインし直し、保温性を高めるために高いクラウンにし、メキシコの暑く日差しの強い気候を遮るためにつばを広くした。また、ロープの邪魔にならないよう、縁を上向きにカーブさせた。西部の人々には標準的な頭飾りがなく、カウボーイハットの進歩とともに、西部の国々はそれぞれのニーズに合わせてカウボーイハットをかぶっていったのである。この帽子は人気を博し、作家のルシウス・ビーブ(1902– 1966)は「西部を制した帽子」と名付けた。カウボーイハットはその後、地球上のさまざまな地域に広がり、さまざまな理由で着用されるようになった。ファッションのために、天候のために、その人気のために、それぞれそれを身に着けている。カウボーイという固有の生業、アメリカ西部という固有の地域の帽子ではなくなったのである。現在、カウボーイハットは毛皮をベースにしたフェルト、ストロー、時にはレザーを使って作られている。帽子の内側にはシンプルなバンドが付けられ、頭部を安定させるが、クラウンの付け根に紐が付いているものもある。色は茶色、黒、ベージュが一般的である。なおステットソン社は1970年に製造を中止した。ステットソンハットは現在、テキサス州ガーランドのハットコ社によって製造されている。

Cowboy Brown How Dress Worn in the West became Western – Points West Online by Nancy McClure

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