2017年3月4日

教育勅語に心酔する安倍昭恵夫人の時代錯誤


ソーシャルメディア Facebook に安倍昭恵首相夫人のページがある。2015年9月5日付けのページには4枚の写真が添付され「大阪の塚本幼稚園にて講演。園児達は大変お行儀が良く元気です。毎朝君が代を歌い、教育勅語、論語や大学などを暗唱」とある。幼稚園児が毎日君が代を歌い、教育勅語などを暗唱しているのを礼賛しているのである。教育勅語、つまり「教育ニ関スル勅語」は、明治天皇が山縣有朋内閣総理大臣と芳川顕正文部大臣に対し、教育に関して与えた勅語だが、1890(明治23)年10月30日に発布され、1948(昭和23)年6月19日に国会の各議院による決議により廃止された。衆議院は「教育勅語等排除に関する決議」したが、参議院も同じく「教育勅語等の失効確認に関する決議」をした。参議院の資料集から決議本文を引用しよう。
われらは、さきに日本国憲法の人類普遍の原理に則り、教育基本法を制定して、わが国家及びわが民族を中心とする教育の誤りを徹底的に払拭し、真理と平和とを希求する人間を育成する民主主義的教育理念をおごそかに宣明した。その結果として、教育勅語は、軍人に賜はりたる勅諭、戊申詔書、青少年学徒に賜はりたる勅語その他の諸詔勅とともに、既に廃止せられその効力を失つている。しかし教育勅語等が、あるいは従来の如き効力を今日なお保有するかの疑いを懐く者あるをおもんばかり、われらはとくに、それらが既に効力を失つている事実を明確にするとともに、政府をして教育勅語その他の諸詔勅の謄本をもれなく回収せしめる。われらはここに、教育の真の権威の確立と国民道徳の振興のために、全国民が一致して教育基本法の明示する新教育理念の普及徹底に努力をいたすべきことを期する。右決議する。
日本は憲法の理念に従って教育基本法を制定し、民主主義的教育理念を宣明した。従って教育勅語はすでに廃止されたものなのに、あたかも存在するような風潮を、国会が戒めた決議だった。ところが決議から70年弱を経た今日に至っても、この忌まわしい教育勅語が跋扈している現実に呆然とする。例えばネット通販サイトのアマゾンで「教育勅語」をキーワードに検索すると、夥しい数の書籍が見つかる。ところが「本当は危険思想なんかじゃなかった」「なんでこんな素晴らしい事を戦後教えなくなったのか?」といった内容の書籍が多いことに愕然とする。新設予定の森友学園「瑞穂の國記念小學院」の名誉校長に昭恵夫人が就任したことが明るみになると、慌てた安倍首相は夫人が名誉校長を辞任したと釈明し「私と家内、事務所も一切関わっていない。関わっていれば政治家として責任を取る」と答弁したが、これで疑惑が晴れたわけではない。所謂「アッキード事件」が明るみになって以来、国有地の不正入手に対してメディアの目が集中している。しかし一番の問題点は教育勅語という危険な教育理念を、一国の宰相夫人が心酔し、公言して憚らない時代錯誤である。

Amazon  藤田昌士「学校教育と愛国心―戦前・戦後の『愛国心』教育の軌跡」(学習の友社 2008年)

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