2015年1月4日

疲れた心に慰安を与える英国の野鳥文学

  
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蚊鉤を巻いた経験がほんの少しあるものの、竿を手に水辺に立ったことはないのに釣り文学が好きである。カラスとスズメくらいなら区別はつくものの、名前を覚えることが大の苦手なくせに、野鳥ないし博物学の本を読むのが好きだ。どうやら私は典型的なアームチェア・アングラー&バード・ウォッチャーのようだ。英国の政治家、エドワード・グレイ卿(1862-1933)の『フライ・フィッシング』を紐解くと、疲れた心に避難場所と慰安を与える本として、アイザック・ウォルトン(1593-1683)の『釣魚大全』は無論だが、ギルバート・ホワイト(1720-1793)の『セルボーンの博物誌』を挙げている。ちょっと意外に思われるかもしれないが、グレイ卿は釣りを趣味にした政治家として有名だが、鳥類学者でもあったのである。ギルバート・ホワイトは博物学者であるとともに、聖職者でもあった。セルボーンは英国のハンプシャー州の東端、ロンドンの南西約80キロメートルに位置する小さな村である。ここに生まれ育ったホワイトは牧師館に住み、村を歩いて野鳥などの生態を観察して二人の著名な博物学者ペナントとバリントンに届けた。だから『セルボーンの博物誌』はいわば書簡集で、それゆえ冗長な側面があるが、背後に繰り広げられる自然描写に癒される。一方、グレイ卿は触れていないが、ウィリアム・H・ハドスン(1841-1922)の『鳥たちをめぐる冒険』に私は惹かれる。ハドスンはアルゼンチン生まれの英国人で『ラ・プラタの博物学者』などで知られているが、鳥類学に長けていた。1978年に講談社から邦訳出版された『鳥と人間』も素晴らしい。終章のタイトルは「セルボーン」で、ホワイトの影響を強く感ずる書である。現在入手困難のようだ。ハードカバーより持ち運びに便利な同社の学術文庫にリストアップされることを期待したい。

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