2014年9月1日

現実を直視するストレート写真への回帰

Patti Smith 1976 ©Robert Mapplethorpe

思う所があってフェイスブックのページ「カメラワークス」にロバート・メイプルソープが1976年に撮影したパティ・スミスの写真をシェアした。湯山玲子さんが書いたパティ・スミス自叙伝『ジャスト・キッズ』ブックレビューが興味深い。「パティ。僕らみたいに世界を見る奴なんて、誰もいないんだよ」とメイプルソープは幾度となくパティ・スミスに語ったという。写真は二人の関係を彷彿とさせる。それは現実を直視する視線があるからだ。思えば1970年代はエキサイティングで面白かった。奇しくもザ・バンドが解散コンサート「ラストワルツ」を開催したのも1976年だった。以来、私はポップ音楽を聴かなくなり、ルーツ音楽、つまり伝承音楽のみになり、今日に至っている。音楽が現実社会と遊離してしまった感があるからだ。写真も同じ、1970年代にピークを迎え、その後は勢いを失ったと私は思うのである。この数年、ピンホール写真を撮ってきたが、これはディテイルを見ることの拒否作用でもあった。コンテンポラリー絵画主義写真と名付けてもいいが、写真が持つリアリティの放棄であるのはいうまでもない。つまり「芸術」という心地よい形容詞に酔った現実逃避であったような気もする。最近フェイスブックに「大判カメラ倶楽部」を創設したのも、伏線として、現実を直視するストレート写真を撮りたくなったからである。この先ピンホール写真を撮り続けるのか、そして自分が創設したフェイスブックグループ「ピンホール写真」をどうするか、参加している人たちのことを考えると悩ましい。

8 件のコメント:

  1. 「現代絵画主義写真」というのはズバリという気がします。ピンホールまでいかなくとも、iPhoneカメラとチープなフィルターのくみあわせは、やや類似の方向性を感じます。ファッション写真では有名なPaolo Roversi氏は、8x10カメラでレンズ開放付近でポラロイドを撮ることで知られていますが、彼の露出は1秒前後がおおく、それで露出中に懐中電灯をあてたりして、モデルの微妙なうごきを捉えてやや絵画的な表現がみられます。35mmカメラやデジタルカメラを手持ちで撮る人達が撮る写真とはまったく違います。わたしもやってみようと思いましたが、最近製造中止になったFP-3000Bではスローシャッターやりにくいし、ネガのコントラストが高すぎるので、デジタルとフィルムを同時に撮れるカメラをつくろうと思ったわけです。こういう用途のフィルムはやっぱりAcrosでしょう。

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  2. コメント、ありがとうございます。最近の湿板写真や古典印画、面白いと思うのですが、まさに復古絵画主義で、やや疑問を持っています。

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  3. 「『芸術』という心地よい形容詞に酔った現実逃避」というのは、もともとそうではなかったけれども、インスタグラム風ないし極度にシアン着色あるいは退色したボケ気味の低コントラスト写真が蔓延している今の時代、ピンホール写真のような絵画主義写真という位置が、居心地がわるくなったという一面もあるのではないでしょうか。私も、白黒ストレート写真の良さが見直されるべき時期だと思います。

    ただ、いまのインスタグラム風写真の隆盛は、シャープなだけでつまらないデジイチ写真の蔓延とか、安易にライティングテクニック頼りで目立つけど中身のない写真が量産されていることへの反動だと思います。わたしも商売上、そういう、心底つまらない写真もたくさん撮っていますので、罪悪感はすこしあります。

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  4. 私も一時期、銀塩乳剤の自家作成、乾板や印画紙の作成をしてメーカーに頼らない写真を目指していました。やっていた当時はそうは思いませんでしたが、今にしてみれば復古絵画主義みたいなものでした。硫黄増感、金増感、色素増感と、やってみてちゃんと感度が倍々になっていったのを見た段階で、おお俺も戦前独逸の水準まで来たかなと満足して終わりました。銀塩ゼラチン方式以前の古典印画やってる人は、意義あることだとは思いますが、自分の人生つかってやろうとは思いませんね。

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  5. デジタルカメラの普及は写真の大衆化をもたらしましたが、それゆえに「ひと味違う写真」ということでHDRやインスタグラムが流行ったと思います。それから所謂トイカメラブームも「ちょっと風変わりな表現で差をつける」ということだったと思います。さて、ストレート写真は復権するか、注目したいと思っています。

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  6. カメラの種類に関わらず、大方の写真はストレート写真ではないでしょうか。その中で、大判(4x5以上)は、言うなればプレミアム(芸術的とは限らない)な写真、と言う位置付けの様に感じます。ボクはロールフィルムの範囲で、古典絵画主義写真を最近模索しています。追々、紹介させていただきます。(YI_99)

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  7. フェイスブックのグループ「Alternative photographic processes」を覗くと、海外では古典写真技法に取り組んでる人が多いのに驚きます。また各地でワークショップが開催されているようで、やはりこれは「流行」と呼んでもいいのでしょうね。日本でもプラチナプリントやサイノアプリントの講習会案内を目にするようになりましたが…。
    https://www.facebook.com/groups/68142897748/

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  8. 念のため。市販のメガネレンズを利用したソフトフォーカス撮影です。プリントは基本的にストレートなゼラチンシルバーです。顔料インクを使ったインクジェットプリンターの実力(モノクロ)を再認識しています。バライタペーペーとの組み合わせに傾きつつあります。

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