2012年9月30日

ギルバート・ホワイト『セルボーンの博物誌』に癒される


釣りに関しては日本でも井伏鱒二や開高健などの優れたエッセーがあるが、野鳥に関してはこれといった書籍に出くわしたことがない。強いていえば高野伸二『野鳥を友に』(朝日文庫)くらいだろうか。ひょっとしたら見落としてる可能性もあるので少し調べようかと思っている。いわば「野鳥文学」ともいえる書籍に、W・H・ハドスンの『鳥と人間』『鳥たちをめぐる冒険』(いずれも講談社)がある。『ラ・プラタの博物学者』と共に私の座右の書だが、後者は文庫本になっているので手に取ることを勧めたい。さらに古典的名著として推薦したいのがギルバート・ホワイト『セルボーンの博物誌』(山内義雄訳・講談社学術文庫)である。岩波文庫から寿岳文章訳が出ているが、旧仮名遣いのため、本書のほうが読みやすいと思われる。

Gilbert White's House and Garden
ギルバート・ホワイト(1720 - 1793)は博物学者であるとともに、聖職者でもあった。セルボーンは英国のハンプシャー州の東端、ロンドンの南西約80キロメートルに位置する小さな村である。ここに生まれ育ったホワイトは牧師館に住み、村を歩いて野鳥などの生態を観察して二人の著名な博物学者ペナントとバリントンに届けた。いわば書簡集なのだが、自然への憧憬と畏敬、そして愛に満ちている。前述W・H・ハドスンに影響を与えたのは言うまでもないが、ファーブルの『昆虫記』など、自然観察文学の魁(さきがけ)をなした名著である。閉塞感が漂う現代社会だが、田園生活に誘う本書に癒される。なおホワイトは1755年に叔父の所有であったセルボーンの「ウェイク屋敷」に定住したが、現在は「ギルバート・ホワイトの館と庭園」として一般に公開されている。庭園の写真を見ると、その美しさにため息が出る。

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