2012年2月28日

マグナムと暗室プリント技術の死

海外のサイトの写真関連記事は実に勉強になる。最近読んだ"Magnum and the Dying Art of Darkroom Printing"(マグナムと暗室プリント技術の死)という一文は実に興味深い。ニューヨーク在住の作家兼編集者、セイラー・コールマン女史の手になるものだ。コダックの倒産報道を機会に、マグナムの暗室プリント主任技術者パブロ・イニリオに会って書いたもので、非常に興味深い。デジタル時代、銀塩写真のプリント技術者の存在は、コダック同様ひん死状態にあるが、かつて、特にフォトジャーナリズムの世界では重要な役割を担っていた。マグナムの創設者のひとりであるアンリ・カルティエ=ブレッソンは「もう何年も自分でプリントしていない。観察にもっと時間を割きたいからだ。こんなことができるのは、私の指図どおりにやってくれるプリント業者を何人か知っているからだ」(ポール・ヒル、トーマス・クーパー著、日高敏訳『写真術』晶文社1988年)と述懐している。自らプリントするのも尊いが、優れた技術者に依頼するのも一方法である。それは画家と彫師、摺り師が分業、高品質を築いた浮世絵の世界に似ている。さて、それはともかく、デジタル化の波によって暗室技術が失われて逝くのは誠に寂しい。ただフォトジャーナリズムの世界では死滅しつつあるものの、ファインアートの世界ではまだまだ健在である点が救いではあるが。

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